KiCadによる電子基板(PCB)設計&発注ワークショップ
ワークショップ概要
電子基板/プリント基板(PCB)の設計ツールであるKiCad(キキャド)を用いてハンズオン形式で基板を設計し、製造会社(JLCPCB)に発注するワークショップを実施しました。
近年ではメディアアーティストを中心に、プリント基板はそれ自体が表現のメディアとしてアート作品に用いられることも少なくありません。
その作り方を知ることで、自由な形状やサイズのパーツでしかできない表現を模索できるほか、輸送で壊れにくく長期間のインタラクティブな展示に耐える安全な作品を作ることが可能になります。
また発注後には届いたプリント基板と、本ワークショップ用に設計された学習用の基板で簡単な実験を行い、電子工作にまつわる危険性についても座学や実演を行うことで”Arduinoを使わない電子工作”への入門となることを目指しました。
ワークショップは2日間(12月4日 ・ 12月18日)に分けて実施されました。
参加者(定員):6名
参加者の所属・学年:油絵、日本画、デザイン科、版画など
【学部2年生〜博士3年生】
一日目 | 12/4(水) 座学・KiCad入門
ワークショップ初日はまず設計例の基板を参加者全員で眺めたあと、電子工作にまつわる危険、とくに感電や火災のリスクについて説明が行われました。
次にプリント基板の素材や構造について確認し、KiCadハンズオンを行いながらLEDを一つ光らせるだけの単純な回路を設計してみることで、一通り発注までの流れを確認しました。
学習用のテンプレート基板には、コンピュータに情報を一時記憶する基本的な仕組みとしても知られる「フリップフロップ回路」を題材に、センサ部分を押したり叩いたりすることでLEDのON/OFFが切り替わるものが用意されました。
初日ワークショップの後、4日間の基板設計のための期間が設けられ、チャットでコミュニケーションを取りながら参加者各々が作りたいものを設計しました。
二日目 | 12/18(水) 基板紹介・実験
ワークショップ二日目には、初日では座学での説明にとどまった電子工作にまつわる危険について、実験による体感を行いました。コンデンサ(キャパシタ)の過電圧印加による破裂実験や、高圧コンデンサの短絡実験、防炎スプレーの効果実演などが行われました。
次に参加者が設計した基板をお互いに紹介しました。各々の関心に沿って、初日に扱ったテンプレートのフリップフロップ基板やボタンを押すことでLEDが光る基板のほかにも、LEDテープ照明を制御するためのArduinoシールド、USBシリアル変換基板、電磁気ノイズを音に変換する基板、などの基板が完成し届きました。
またワークショップ終盤には残った時間を使って、基板を使った簡単な実験を行いました。
オシロスコープで波形を見ることで、学習用基板のピエゾ素子を叩いたときに発生する電圧のスパイクが、デジタルのパルス波形に変換されて回路を動かすトリガーになっていることを視覚的に確認しました。
まとめ
中にはパーツが小さく手でのはんだ付けが難しかったり、入手が困難などの理由で部品が取り付けられなかったものもありますが、参加者全員がオリジナルの基板を設計・発注できました。
AMCでは今後も電子工作にまつわるワークショップなどを企画していきます。こうした企画に関心がある方は、クラスコード「6vw46wa」から「AMC Electronics/Tinkering CLASS」にご参加ください。
協賛:JLCPCB(基板製造)